寝違えによる背中や首、肩の痛み~その原因と治療法、対処法について

朝起きると、背中や首が痛くて動かせない「寝違え」。
その日の一日を痛みに悩まされてしまうという経験をお持ちの方も多いでしょう。
身近な症状ではありますが、家事や仕事、学業などに大きな影響を与えてしまい、不快な症状が続いて、夜になってもゆっくり休めないこともあります。
私たちにとって「寝違え」という言葉は一般的なものになっていますが、これは医学用語ではなく病院やクリニックなどでは「急性背部痛」「急性頸部痛」「急性疼痛性頸部拘縮」などと呼ばれます。
つまり背中や首などに起こる急性の炎症のことを指しています。
そのような悩みを抱えないようにするために、寝違えの原因について理解し、適切な対処法や治療法を知っておくことが大事です。
Contents
寝違えの原因
寝違えは、朝起きた瞬間から背中や首に痛みを感じ、首を動かしたり、腕を動かすことが不快な状態のことを指しています。
多くの人に経験のある痛みであり、一般的には痛みだしてから3日程度で治まることが多いですが、重症化した場合には1週間以上も症状が継続することもあります。
しかし病院で検査してみても、画像で捉えられるような原因が見つかることはほとんどありません。
ここでは、不快な痛みを生じさせる寝違えの原因について詳しくお伝えしていきましょう。
睡眠時の姿勢
寝違えの原因の一つとして、「睡眠時の姿勢」が挙げられます。
睡眠時には無意識のうちに寝返りを行って、身体の疲れをほぐしていますが、寝返りがしっかり出来ていないと体液の循環が悪くなってしまい寝違えを起こしてしまいます。
私たちの体は60%が水分で構成されており、同じ姿勢を取り続けてしまうことによって、循環障害となってしまい、特定の部位に負担をかけてしまいます。
特に睡眠時には背中や首など、体重を支えている部位に負担をかけてしまうことになり、血流を低下させてしまう原因となりますから、寝返りがとても重要なポイントとなります。
しかし疲れていたり、飲酒をしたり、睡眠状態が悪いときには、十分に寝返りすることができないことがあり、寝違えを生じさせてしまうのです。
マットレスなど寝具が身体に合っていない
マットレスなど寝具が合っていない場合や、寝床が狭くて睡眠時の姿勢が悪くなってしまう場合には、寝違えを起こしてしまうことがあります。
これも先ほどの「睡眠時の姿勢」によるものですが、マットレスが柔らかくてふわふわのような場合であれば、睡眠中にしっかりと寝返りすることができず、体に負担をかけてしまうことがあるのです。
そのため寝返りできる硬さのマットレスにすることが、寝違え対策として有効な手段となります。
さらに枕の高さが合わない場合には、寝違えによって首の痛みを生じさせてしまうことがあります。
首の痛みを感じる寝違えでは、睡眠中に首に大きな負担がかかっていることが少なくありません。
特に枕が高い場合には、頭を前傾させたまま睡眠を取ることになりますから、その部位だけ血行不良になってしまうのです。
睡眠をとってもしっかりと眠れている感じがしなかったり、たびたび寝違えを起こすようであれば、自分に合った枕に変更してみることも一つの対策になるでしょう。
血流の低下
睡眠時の姿勢も寝具が合っていないことも、すべては身体に負担のかかっている部位に対して血行不良がみられることが原因です。
背中や首など負担のかかっている部位は、筋肉の繊維にある毛細血管を圧迫することによって、血行不良を起こしてしまいます。
その部位の血流が低下してしまうと、疲労物質を除去することができなくなってしまうので、痛みを生じる寝違えとなって現れます。
背中においては、首から肩にかけて僧帽筋と呼ばれる筋肉があり、首においては胸鎖乳突筋によって体を支えていますが、これらの筋肉の血流が低下してしまうことによって寝違えが現れるのです。
ストレス
日々のストレスが原因で寝違えを起こすことも珍しいことではありません。
もし仕事や人間関係などのストレスを抱えており、寝違えを起こす頻度が多いとしたら、ストレスが直接的な原因なのかもしれません。
私たちの身体は自律神経によって緊張を高めたり、リラックスすることができるようになっています。
しかしストレスが積み重なっている状態では、常に緊張状態となってしまい、リラックスすべき状態でも体や筋肉に負担をかけてしまっているのです。
ストレスが原因となって筋肉に負担をかけ、血流を低下させてしまい、寝違えの症状となって現れてしまいます。
筋肉の痙攣
普段から運動量が少なく、デスクワークをしているような人が、急に激しい運動することによって寝違えを起こしてしまうことがあります。
これは筋肉に急激に緊張を与えてしまうことによって硬直してしまい、筋肉の血流を低下させてしまうからです。
寝違えだけではなく、ふくらはぎなどにこむら返りを起こしてしまうことがありますが、これも寝違えと同じ原理で症状が現れているのです。
寝違えの一般的な症状

症状①首や肩の痛み
症状②背中の痛み
症状③腕を動かすと痛い
寝違えに多い一般的な症状は、首や背中、腕の痛みになります。
首が回らないというイメージが強くありますが、首以外にもさまざまな部位に症状は現れます。
症状①首や肩の痛み
寝違えでもっとも多い症状は首が動かないというものでしょう。
上下左右など痛みによって動かせないということもあれば、片側だけ動かせないという症状が現れることもあります。
まったく動かしていない状態であっても痛みが生じることも少なくありません。
また首の痛みだけではなく、肩や腕まで痛みや痺れを感じることもあり、背中にまでその症状が現れるようなことも珍しいことではありません。
首周辺の筋肉の血流が低下していることが原因ですが、痛みが生じる部位に対して過度な負担をかけてしまったり、神経に対する圧迫が原因であると考えられます。
症状②背中の痛み
寝違えを起こしてしまって、起きようとするだけで背中に激痛が走ってしまい、体を起こすことができないということがあります。
特に肩甲骨周辺の痛みを訴える方が多くみられます。
寝違えを起こした際に背中、特に肩甲骨の痛みが強い場合であれば、肩甲骨周辺にある僧帽筋と呼ばれる筋肉が硬直し、血行不良を起こしていることが考えられます。
さらに肩や首まで広範囲に影響することもあります。
背中の寝違えを起こす方に多いタイプは、デスクワークをしていたり、悪い姿勢のまま過ごしていたりといったことが言えます。
常に背中に負担をかけて生活しており、睡眠中の姿勢不良なども重なって、寝違えを起こしてしまうのです。
症状③腕を動かすと痛い
寝違えによって、腕を動かすと痛い、腕が痺れている、腕がだるいという症状が現れることがあります。症状が強い場合には、腕をまったく動かすことができず、腕が上がらないということもあります。
首周辺の筋肉に対する負担や神経の圧迫が原因であることが多く、血行不良を改善させることが解消法のひとつであると言えます。
ただ首が動かしづらく腕の痺れが強い場合には、「頚椎(けいつい)症」といったものが隠れている場合がありますから注意が必要です。
寝違えによる首や肩の症状を治す方法

寝違えは痛みが生じる部位の血流の低下や神経の圧迫が原因ですから、時間の経過とともに症状が落ち着いてくることがほとんどです。
そのため特に何も対処することなく、そのまま我慢しているという方も多いのではないでしょうか。
しかし中には数日、痛みが継続することや1週間から2週間経っても痛みが治まらないということもあります。
あるいは良くなったと思ったら、また寝違えの症状が現れることもあるのです。
痛みが強く、体を動かせない、仕事や家事ができないという場合やいつまで経っても症状が治まらない、寝違えを繰り返してしまうといった場合には医師に相談することが適切です。
鎮痛剤などの薬を服用する
「寝違えを起こしたら、いつもロキソニンを飲んでいる」などと、市販の鎮痛剤を服用している方も多いのではないでしょうか。
寝違えは1日から数日で治まることが多いので、痛みに対する対処療法として鎮痛剤を服用することはとても有効になります。
また首や肩、背中など痛みが強い部位に対して、炎症を抑えるために湿布薬を貼って様子をみることもいいでしょう。
運動後のこむら返りを伴うような場合には、甘草湯といった漢方薬を服用することも有効であると知られています。
ただしこれらの対処法によって効果がでなかったり、回復が遅かったり、逆に悪化しているような場合には、病院やクリニックに受診することが必要です。
痛みが強い部位を冷やす
寝違えによってすでに痛みが強い場合には、安静にして患部を冷やすことが大切です。
炎症を起こしている間は温めることは避けて、痛みが治まるまでは冷やすようにしましょう。
血行不良が原因になりますから、温めるほうが効果的なイメージが強いかもしれません。
確かに予防法としては効果的ではありますが、痛みの対処法としては適切ではありません。温めてしまうことでむしろ悪化させてしまうことがありますので注意しましょう。
ツボを刺激する
寝違えの症状が軽度の場合に対しては、ツボを刺激することによって症状を軽減させることができます。
刺激する有効なツボは脇(わき)の内側です。
脇の内側には「腋窩(えきか)神経」と呼ばれる神経が通っており、その部位を刺激したり、ストレッチすることが有効であると言われます。
寝違えにおいては痛みが強い首などを直接ストレッチやマッサージすることは、症状を悪化させる可能性があります。
しかし腋窩神経の刺激であれば、そのような悪化リスクは低いと言えるでしょう。
首の痛む側の腕を後ろに引き上げ、止まるところで20秒間キープし、その後、ゆっくりと腕をおろします。
この動きだけで腋窩神経を刺激し、緊張をほぐすことができます。
ただし効果が感じられなかったり、痛みが強い場合には、無理しておこわないようにして、安静を保つようにしてください。
病院やクリニックに受診する
痛みが強く動かすことができない、薬を飲んでも良くならない、時間が経過しても回復しないなどといった場合には、整形外科をはじめ病院やクリニックに相談するようにしましょう。
寝違えは身近な症状であるために、すぐに良くなると考えてそのままにし、悪化した状態になってしまって受診するというケースが少なくありません。
しかし自身の対処だけで回復するのは難しいといった「見極め」はとても大事です。
中には別の重大な疾患が潜んでいることもあります。決して無理せず、早めに病院やクリニックに受診することが大切なのです。
寝違えを自分で対処・予防する方法
よく寝違えを起こしてしまう方であれば、自分自身で対処法を持っておくといいでしょう。
普段から予防に努めておけば、寝違えを起こすリスクは少なくなりますし、身体の負担も少なくなって健康を維持することができるようになります。
枕やマットレスを変えてみる
寝違えの原因として、枕やマットレスが考えられますので、自身に合っているものに変えてみることは予防法としてとても有効です。
特に頭が前傾になるほど高い枕や、寝返りがうちにくいほどのふわふわなマットレスは、寝違えの原因になるものです。
近年では身体に合った枕をオーダーメイドできるサービスや身体の圧を分散させるマットレスもありますから、うまく活用するといいでしょう。
普段から正しい姿勢を意識する
正しい姿勢は、健康を維持するためにとても重要なものです。
特に普段から姿勢が悪かったり、スマートフォンをよく活用していたり、デスクワークでパソコンを利用することが多い場合においては、普段から正しい姿勢を意識するようにしましょう。
姿勢が良くなると、身体の一部分に負担をかけることがなくなり、血流を改善させることが可能です。
ゆっくり入浴して疲れを取る
シャワーで済ませているという方であれば、ゆっくり入浴するようにして、全身の疲れを取るようにしましょう。
シャワーだけでは体の芯まで温めることができず、しっかりと疲れを取ることができません。
入浴すれば血流がよくなり、疲労物質を体内から除去することができると同時に、ストレスの解消にも繋がります。
ただし寝違えの痛みが強い場合には、悪化してしまう可能性がありますから、避けるようにしましょう。
運動後のミネラル不足や脱水を防ぐ
激しい運動をしたあとに寝返りを起こすことがありますが、これは筋肉の過剰な動きによるもので、ミネラル不足や脱水が症状を招くことが知られています。
ミネラルとはカルシウムやカリウム、マグネシウムといった物質で筋肉の作用に大きな影響を与えるものです。特に加齢によって筋肉は衰えていきますから、普段からわかめやひじきなどでミネラルを十分に摂っておくようにしましょう。
また運動中や就寝前にしっかりと水分を補給するようにします。
運動中は気付かない間に脱水を起こしがちであり、就寝中の発汗によっても脱水を起こしてしまうこともあります。
脱水は血行不良の原因となってしまいますので、水分摂取はとても大事なのです。