腰の激しい痛みはヘルニアによるものかも?!腰椎椎間板ヘルニアの検査・診断・治療・予防について

重いものを持ち上げたときや何かのきっかけによって、腰に対して激しい痛みを感じてしまい、立っていられなくなることがあります。
その痛みがいつまで経っても治まらず、慢性的になっているのであれば「ヘルニア」によるものかもしれません。
腰だけではなくお尻や太もも全体にまで痛みや痺れを伴うこともあり、咳やくしゃみだけで激痛となることもなります。
急な腰痛であればまずは安静にしておくことが大事ですが、悪化した場合には、排泄がうまくできなくなることもありますので、適切に対処することが必要となります。
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腰の激しい痛みはヘルニアによるものかも?!
腰痛を抱えている方は少なくありませんが、重い荷物を持ったときや体を急にひねったときに現れる腰痛は、症状によっては起き上がれないほど激痛を伴うことがあります。
安静にしていても痛みが治まることはなく、軽い咳やくしゃみまで腰部に響いてしまって、強い痛みを感じてしまいます。
そのような激しい痛みは「ヘルニア」によるものかもしれません。どのような症状なのか、詳しくお伝えしていきましょう。
腰のヘルニアとは
腰のヘルニアとは、背骨と背骨の間にある「椎間板」と呼ばれる軟骨が変形してしまい、外側に飛び出して神経を圧迫している状態のことを言います。
ヘルニアという言葉は、この軟骨が飛び出している状態のことを指しています。
私たちの背骨は、椎骨という骨が積み重なって構成されており、腰部においては5つの椎骨によって出来ています。
体がうまく動かすことができるように、この椎骨と椎骨の間には椎間板と呼ばれる軟骨があり、クッションの役割となっています。
しかし重いものを持った際に椎間板が潰れてしまったり、加齢によって少しずつ椎間板が衰えてしまうことによって神経を圧迫してしまい、腰痛を引き起こしてしまうのです。
腰のヘルニアは、いわゆる「ぎっくり腰」のように、重いものを持つことによって腰痛を引き起こすことをイメージしますが、日常の動作や激しいスポーツなどが原因となることもあります。
さらに仕事や人間関係などのストレスや不安感や抑うつ症状といった精神的な側面、喫煙などの生活習慣なども、腰のヘルニアの要因になると考えられています。
腰椎椎間板ヘルニアに有効なストレッチの方法
腰部椎間板ヘルニアの予防として、ストレッチを行うことはとても有効です。
ストレッチによって硬くなっていた筋肉をほぐすことができ、体を支える体幹を鍛えることができるからです。
お風呂上りや運動後の、体が温まっている時に行うと効果的です。腰部に効果的なストレッチの方法を2つご紹介します。
①仰向けに寝て両ひざを立て、両肩を床に付けた状態で両ひざをゆっくりと倒していきます。左右10回程度行うといいでしょう。
②仰向けに寝て両ひざを立て、両手をお尻の下において腰をゆっくりと持ち上げます。少し持ち上げた状態で5秒程度保ち、ゆっくりと落ろします。
痛みが生じている場合には、悪化させてしまう要因となることがありますから、控えるようにして、医師の指示のもとに取り組むようにしましょう。
腰椎椎間板ヘルニアの症状の特徴について

腰椎椎間板ヘルニアは、誰もが発症させるリスクを持っているものですが、男女差においては男性は女性の2~3倍程度となっていることが知られています。
発症のピークは50歳程度であり、20代~40代での発症が多くなっており、高齢者だけではなく若者においてもみられる症状です。
腰の激しい痛み「腰椎椎間板ヘルニア」の症状
腰部に起こるヘルニアのことを「腰椎椎間板ヘルニア」と呼んでおり、激しい痛みを発症すると同時に、痺れを伴うようなことも少なくありません。
首から構成されている背骨は、24個の椎骨によって形成されており、上から7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎に分かれています。
5個の腰椎にヘルニアの症状がみられる場合には、「腰椎椎間板ヘルニア」として診断されることになります。
特に椎間板ヘルニアの中でも腰椎椎間板ヘルニアの割合が高く、中高年だけではなく若い世代においても少なくありません。
そもそもヘルニアを発症させてしまう椎間板は、椎骨と椎骨のクッションの役割を担っており、縦方向の圧力にはうまく対応できるようになっています。
しかし曲げたりひねったりしている状態で圧力をかけてしまうことに弱く、ヘルニアを起こしやすい作りになっているとも言えます。
そのため、腰を曲げた状態で重い荷物を持つことや、体を急にひねってしまったことがきっかけとなって、ヘルニアを起こしてしまうことが多いのです。
腰椎椎間板ヘルニアの概観
腰椎椎間板ヘルニアは、冒頭からお伝えしている通り、腰椎の椎間板が潰れてしまうことによって神経を圧迫している状態となっています。
この椎間板は腰椎を構成する5つの椎骨と椎骨の間にしっかりと付着しており、腰椎を安定させるために靭帯も一緒に結合しています。
ゲル状(ゼラチン状)の粘り気のある組織になっており、この組織のことを「髄核」と呼んでいます。またその周辺には、「繊維輪」と呼ばれるコラーゲンでできた組織が取り囲んでいます。
椎間板ヘルニアでもっとも起きやすい部位は、第4腰椎と第5腰椎の間と第5腰椎と仙骨と呼ばれる臀部当たりに位置する椎骨との間の2か所となっています。
ヘルニアを起こしてしまった場合には、髄核が椎骨の間から飛び出してしまっている状態であり、繊維輪まで飛び出してしまうこともあります。
多くはヘルニアの状態で神経を圧迫して症状を引き起こしていますが、重度の場合においては支えている靭帯も破れてしまい、髄核の一部が飛び出してちぎれていることもあります。
そのヘルニアの状態によっても症状の程度が異なり、腰痛はもちろんのこと、太ももやふくらはぎに痺れを伴うことや、麻痺によって足が持ち上げにくい、歩行しづらいという症状が現れることもあります。
重度になると足の感覚が鈍くなってしまい、排泄がしにくくなることもあります。
腰椎椎間板ヘルニアの予防と治療、治療後の注意点

腰椎椎間板ヘルニアは日常的な動作から発症することが多いために、意識的に行動することによって予防することも可能です。
ここでは効果的な予防法に加え、治療後の注意点についてもお伝えしていきましょう。
腰椎椎間板ヘルニアの予防
腰椎椎間板ヘルニアの予防法として最も大事な考え方は、「腰部に負担をかけないこと」になります。負担をかけない過ごし方が、すべて予防法となるのです。
日常動作で言えば、『正しい姿勢に心がける』ことが重要です。
歩行時の姿勢、デスクワークでの姿勢など、日常的な姿勢は腰部椎間板に大きな負担をかけるものになります。
特にパソコンやスマートフォンを使用している際には、同じ姿勢になり続けていたり、前かがみでの姿勢になることがありますので、意識的に正しい姿勢を心がけるようにしましょう。
『運動習慣』も予防のうえでとても大切です。
適度な運動を継続的に行うことが大事であり、ジョギングやウォーキング、スイミングなどが効果的であると考えられています。
運動を継続することによって、適正体重に保つこともでき、筋肉を付けることによって腰部への負担を軽減させることができるのです。
腰椎椎間板ヘルニアの治療、治療後の注意点
腰椎椎間板ヘルニアの治療の多くは保存治療であり、鎮痛剤等の服薬やコルセットの着用などによって自然に治癒することを目指していきます。
保存治療の場合、鎮痛剤等の効果によって痛みが消失することも少なくなく、また治療が進むにつれて痛みが少なくなっていくことも多くみられます。
ただし神経の圧迫や炎症が治まっているだけであり、また重いものを持ったり、腰をひねったりすることによって引き起こす可能性があります。
神経の圧迫や炎症が治まれば安静にしておく必要はありませんが、椎間板に負担をかけるような動作は控えるようにした方がいいでしょう。
また外科手術後においても同様のことが言え、椎間板をすべて取り除いたわけではありませんから、再発する可能性は残されています。
実際、手術後2年以内に再発している方は多いので、注意して過ごすことが大事です。
腰椎椎間板ヘルニアの原因と病理
腰部椎間板は、私たちの骨格を形成するうえで中心部分に位置するものであるため、仕事や学業、家事など生活動作においてとても重要なものであると言えます。
そのため腰椎椎間板ヘルニアにおいても、私たちの日常動作に深く関係していると言えます。
例えば重労働についている方やバスやタクシーの運転手などのように、腰部に負担のかかる業務に就いている方は、デスクワークの方と比べると3倍程度リスクが高いと言われます。
また主婦であっても、買い物で重いものを持ったり、子供を抱きかかえるだけでもヘルニアを起こしてしまうリスクが高くなるのです。
さらに健康維持のために行っているスポーツにおいても、腰をひねる動作や重いものを抱える動作などにおいては、リスクにならないとは限りません。
運動動作だけではなく、喫煙習慣は腰部椎間板ヘルニアと密接な関係があると考えられています。たばこを10本程度吸う習慣がある方は、そうでない方と比べると発症率に20%程度の差があることが調査によって分かっています。
近年の研究においては、遺伝的な要因によって発症リスクが高くなることも分かってきました。
腰部椎間板ヘルニアを切らずに治すはできますか? ? ?
腰部椎間板ヘルニアを起こしてしまった場合、どうしても手術しなければならないイメージが強くあるのではないでしょうか。
しかし半数以上の患者は、手術をしなくても改善していることが知られています。
腰部椎間板ヘルニアの痛みの原因は2つあり、一つは神経の圧迫によるもの。もう一つは炎症によるものです。
一つ目は、ヘルニアによって神経の圧迫を生じさせるのですが、ヘルニアが小さくなることによって神経の圧迫がなくなることがあります。
私たちが持っている免疫機能によって、数か月程度で小さくなっていくことも多いのです。
また二つ目の炎症を引き起こしている場合においても同様で、炎症が少しずつ治まっていく中で、腰痛が軽減していくのです。
このような免疫機能によって、腰椎椎間板ヘルニアは切らずに済んでいることが多いのです。
腰椎椎間板ヘルニアの検査・診断
腰椎椎間板ヘルニアの診断については、問診をはじめとして、MRI検査や椎間板造影、CT検査などの「画像検査」や、下肢伸展挙上テストなどの「神経学的検査」によって行われます。
特に腰椎椎間板ヘルニアが疑われる場合においては、MRI検査などの画像検査によって腰痛の原因を明らかにしていきます。
問診においては、腰からお尻や太ももなど広範囲に痛みや痺れがあったり、足の感覚や力が弱くなっていたり、尿が出ずらいなどといった症状を確認します。
そのような症状と共に、持続的に痛みや痺れが続いているようであれば、下肢伸展挙上テストや大腿神経伸展テストなど、神経障害を調べる診察を行います。
下肢伸展挙上テストにおいては、膝を伸ばした状態で上に持ち上げて、太ももやふくらはぎなどに痛みが生じるかどうか確認していきます。この検査においては、第4腰椎と第5腰椎の間のヘルニアの状態を確認することができます。
大腿神経伸展テストは、うつ伏せに寝た状態で膝を曲げた状態で上に持ち上げて、太ももの付け根やすねの内側に痛みが生じるかどうか確認します。第1腰椎から第4腰椎までのヘルニアの状態を確認することができます。
これらのテストはヘルニアが生じている場合でも反応がでない場合がありますから、MRI検査やレントゲン写真など、画像によって症状を確認していきます。
特にMRI検査は、腰椎椎間板ヘルニアの状態を確認するうえでもっとも優れているとされており、身体へ負担をかけることなく確実に状態を観察することが可能です。
腰椎椎間板ヘルニアの中には、ヘルニアの状態であるにもかかわらず、まったく症状が現れないという「無症候性椎間板ヘルニア」と呼ばれるものもあります。
そのようなものまで画像検査では確認していくことができるのです。
どんな外科治療を受けていますか?
腰椎椎間板ヘルニアは、先ほどの章でお伝えした通り、約半数は手術することなく改善していることが多く、痛みが生じる間は保存療法に努めることになります。
保存療法とは痛みができる限り生じないようにするためのもので、安静にして過ごすことを中心に、鎮痛剤や筋弛緩薬の服用、コルセットの着用、牽引治療などが保存療法に含まれます。
これらに取り組むことによって、数か月程度で痛みが改善することが少なくありません。
手術療法は、痛みの原因となっているヘルニアを取り除くことができますから即効性があり、小さな切開のみで行うことができます。
ラブ法と呼ばれるもので、神経を圧迫している椎間板を、顕微鏡や内視鏡などを用いながら取り除いていきます。手術後、3日程度で歩行することができるようになります。
現在はレーザーの熱で神経を圧迫している椎間板の圧力を減らしていくような手術も可能です。